用語集

全576件の神経科学用語を収録しています。

ミラーセラピー (みらーせらぴー) Mirror therapy
ラマチャンドラン博士(V.S. Ramachandran)が提唱した幻肢痛の治療法。鏡を用いて健側(健康な手足)の動きを患者に視覚的に提示することで、脳が「失われた手足が動いている」と認識し、脳内地図を再整理して痛みを軽減させる。視覚という「刺激」を用いた脳の再プログラミング(神経可塑性の活用)である。幻肢痛のほか、脳卒中後の麻痺リハビリにも応用される。 [臨床神経学] 痛み, 眼・視覚, 治療・リハビリ
無感覚痛 (むかんかくつう) Anesthesia dolorosa
感覚が麻痺または消失しているにもかかわらず、その部位に痛みを感じる状態。求心路遮断性疼痛の一形態。手術後の癒着や長年の放置による感覚麻痺が原因となることが多い。治療の標的は痛みそのものではなく、失われた「感覚(求心性入力)」の復元である。 [病態生理学] 痛み, 感覚, 治療・リハビリ
無痛性疼痛 (むつうせいとうつう)
長期にわたって入力が途絶えた神経系で、二次ニューロンが勝手に発火し始める現象。触っても感覚がないのに痛い・痺れると訴える原因。 [感覚系] 痛み, 感覚
メニエール病 (めにえーるびょう)
内リンパ水腫によって引き起こされる疾患で、めまいと聴覚障害が「同時に発生」し「同時に消失」することが病理的定義。タイムラグがある場合は別機序を疑う。 【図解】第30回講義ノート 図1:聴覚伝達路の多段階構造(第7次ニューロンまで) 【図解】第30回講義ノート 図2:三叉・顔面神経による聴覚調整機構 [臨床神経学] 末梢神経, 聴覚・前庭
眩暈感 (めまいかん)
眼振を伴わない不安定性。「ふわふわする」「雲の上を歩いているよう」と表現されることが多く、視覚や足裏からの感覚情報の統合エラー、あるいは脳幹の血流不全などが背景にある。 [臨床神経学] 脳, 感覚, 血管・循環, 眼・視覚, 聴覚・前庭, 情動・心理
メルケル細胞 (めるけるさいぼう)
表皮基底層に存在する機械受容器。持続的な圧力や形状の識別に関与し、順応が遅い特性を持つ。 【図解】第6回講義ノート 図2:皮膚の受容器の種類と分布 [感覚系] 感覚
網膜像の安定化 (もうまくぞうのあんていか) Retinal Image Stabilization
頭部が動いても視線を固定し、網膜の中心窩で捉えた画像を安定させる機能。前庭動眼反射(VOR)によって実現され、移動しながら物体を認識できる能力の基盤となる。この機能が破綻すると眼振が発生し、視覚情報の80%以上を失う危機的な状況となる。[第33回講義ノート:前庭神経系の臨床生理学:水平半規管における相反抑制と三重の制御機構](/article/vestibular-system-horizontal-canal-reciprocal-inhibition)で詳しく解説されている。 [感覚系] 末梢神経, 感覚, 運動, 眼・視覚, 聴覚・前庭, 臨床検査
網様体 (もうようたい)
脳幹に広がる神経細胞の網目状構造。意識レベルの維持、姿勢制御、自律神経機能の調節に関与する。 【図解】第18回講義ノート 図2:橋網様体と延髄網様体の相反する作用 【図解】第20回講義ノート 図2:ゲインとセンシビリティの関係 【図解】第21回講義ノート 図1:下降性調整経路の全体像 [神経解剖学] 脳, 運動, 自律神経
毛様体脊髄路 (もうようたいせきずいろ)
網様体から脊髄に至る経路。姿勢維持や筋緊張の調節に関与し、主に体幹や近位筋を制御する。 【図解】第9回講義ノート 図1:錐体外路の主要経路 [運動系] 筋肉, 脳, 脊髄, 運動
夜間痛 (やかんつう) Nocturnal Pain / Night Pain
夜間の安静時に増悪する痛み。寝返りを打つだけで激痛が走る、就寝中に痛みで目が覚めるなどの症状を呈する。末梢の急性損傷が治癒した後も夜間痛が持続する場合、病態は中枢性感作(辺縁系エラー)へ移行していることを示唆する。自律神経系の日内変動(夜間の副交感神経優位)による血管拡張と炎症性メディエーターの蓄積も関与する。 [臨床医学] 脳, 痛み, 自律神経, 血管・循環, 情動・心理, 臨床検査
夜間低血糖 (やかんていけっとう) Nocturnal hypoglycemia
就寝前の糖質摂取により血糖値が急上昇し、その反動で睡眠中に血糖値が過度に低下する状態。脳が危機を感知してアドレナリンを放出し、交感神経を緊急発動させることで、中途覚醒や悪夢、食いしばりが発生する。 [生化学] 自律神経, 内分泌, 臨床検査
有毛細胞 (ゆうもうさいぼう)
内耳の前庭器官や蝸牛に存在する感覚細胞。細胞表面に動毛と不動毛という感覚毛を持ち、機械的刺激を電気信号に変換する。チップリンクというバネ構造により、物理的な頭部の傾きや音波の振動を神経活動へと変換する。【関連記事】第31回講義ノート:前庭神経系の臨床生理学(図1:チップリンクの構造と働き)では、有毛細胞の詳細な構造と機能を図解している。 【図解】第32回講義ノート 図1:前庭有毛細胞のチップリンク構造と働き [解剖学] 感覚, 聴覚・前庭
抑制系 (よくせいけい)
神経活動を抑制する神経回路。過剰な興奮を防ぎ、運動や感覚の調節に重要な役割を果たす。 【図解】第7回講義ノート 図1:下降性疼痛抑制系の構造 【図解】第15回講義ノート 図1:しびれの二つのタイプ:知覚鈍麻と知覚異常 [神経生理学] 痛み, 感覚, 運動
翼突筋神経 (よくとつきんしんけい)
三叉神経の運動枝である下顎神経(V3)から分岐する神経。咀嚼筋(内側翼突筋、外側翼突筋)と口蓋帆張筋を支配する。口蓋帆張筋の支配により、耳管の開閉機能に関与する。この神経の障害により、咀嚼障害や耳管機能不全が生じる可能性がある。 【図解】第29回講義ノート 図2:耳管開放と口蓋帆張筋の神経経路 [解剖学] 筋肉, 末梢神経, 運動, 聴覚・前庭, 嚥下・発声
448呼吸法 (よんよんはちこきゅうほう) 4-4-8 breathing technique
4秒吸い・4秒止め・8秒かけて鼻から吐く呼吸法(根室式)。吐く時間を長くすることで副交感神経を強く刺激し、自律神経の過緊張を解消する。慢性痛患者の自宅ケアとして推奨される。 [臨床神経学] 痛み, 自律神経
リンネ検査 (りんねけんさ)
骨伝導(BC)と気導伝導(AC)の聴力を比較する検査。音叉を乳様突起に当てた後、外耳道近くに保持し、正常ではAC > BCとなる。伝音性難聴と感音性難聴の鑑別に用いられる。 【図解】第31回講義ノート 図1:ウェーバー・リンネ検査の実施方法 【図解】第31回講義ノート 図2:聴覚路の第7次ニューロン伝達と大脳皮質の左右性 [神経系] 脳, 聴覚・前庭, 臨床検査
涙腺神経 (るいせんしんけい) Lacrimal Nerve
眼神経(三叉神経第一枝)から分岐する神経。涙腺の感覚を支配し、角膜の乾燥を検知して涙の分泌反射を誘発する経路の一部を構成する。 【図解】第27回講義ノート 図2:三叉神経(CN V)の眼神経枝と涙分泌反射のメカニズム [末梢神経] 末梢神経, 感覚, 運動, 眼・視覚, 臨床検査
レクセドの層 (れくせどのそう) Rexed laminae
脊髄灰白質を機能的・形態的に10の層(ラミナI〜X)に分類した区分。スウェーデンの神経解剖学者ブレ・レクセドが提唱。後角(ラミナI〜VI)は感覚情報の処理、前角(ラミナVII〜IX)は運動神経細胞、中間質(ラミナX)は中心管周囲。第1・2層はAδ・C線維が終始し鋭い痛みや鈍い痛みを処理。第5層は低閾値型で微細な刺激にも発火しやすく、頭皮過敏や慢性痛の原因となる。 [解剖学] 脊髄, 末梢神経, 痛み, 感覚, 運動
レコーディング療法 (レコーディングりょうほう)
患者に症状の発生状況を手書きで詳細に記録してもらう治療法。指先の複雑な動きが脳を広範囲に活性化させ、古い記憶や感情を整理しやすくする。文字に起こすプロセス自体が、過敏になった脳を沈め、神経の異常興奮を抑える「脳の再学習」として機能する。 [臨床神経学] 情動・心理, 治療・リハビリ
ワインドアップ (わいんどあっぷ)
神経系の機能が活性化し、生命力が高まる状態。感覚受容器の左右差を調律し、視床からの出力を適正化することで、患者の心と体をワインドアップさせることが治療の目標である。 [臨床神経学] 脳, 感覚, 治療・リハビリ
ワインドダウン (わいんどだうん)
神経系の機能が低下し、生命力が減退する状態。腸腰筋の緊張や胃痛が続くと、脳への血液供給も低下し、辺縁系も機能低下(ワインドダウン)を起こす。 [臨床神経学] 筋肉, 内臓, 脳, 情動・心理
ワインドダウン (わいんどだうん) Wind-down
神経回路のループ内の一箇所の入力が滞ると、全体の出力が渦巻き状に低下していく現象。辺縁系のワインドダウンは、うつや意欲喪失といった身体症状を引き起こす。 [神経系] 脳, 情動・心理
ワレンベルグ症候群 (われんべるぐしょうこうぐん)
延髄外側症候群。延髄外側の病変により、同側顔面の温痛覚障害と対側体幹の温痛覚障害(交互性感覚障害)を呈する。 【図解】第1回講義ノート 図1:三叉神経脊髄路核のコラム構造とオニオンスキン配置 【図解】第29回講義ノート 図1:三叉神経脊髄路のコラム構造とオニオンスキン配置 [臨床神経学] 脳, 脊髄, 末梢神経, 痛み, 感覚
ワレンベルグ症候群 (われんべるぐしょうこうぐん)
延髄外側症候群とも呼ばれる、後下小脳動脈(PICA)または椎骨動脈の閉塞により延髄外側が梗塞する病態。同側の顔面感覚障害(三叉神経脊髄路核の障害)、対側の体幹・四肢の感覚障害(脊髄視床路の障害)、同側のホルネル症候群、小脳失調、嚥下障害などが生じる。オニオンスキン配置により、顔面の部分的な感覚障害が特徴的である。 【図解】第1回講義ノート 図1:三叉神経脊髄路核のコラム構造とオニオンスキン配置 【図解】第29回講義ノート 図1:三叉神経脊髄路のコラム構造とオニオンスキン配置 [臨床神経学] 脳, 脊髄, 末梢神経, 感覚, 運動, 自律神経, 血管・循環, 嚥下・発声
腕神経叢 (わんしんけいそう) Brachial Plexus
C5からT1の神経根から形成される、上肢の運動と感覚を支配する神経の複雑なネットワーク。神経幹(上幹・中幹・下幹)、前部・後部への分岐、神経束(外側・内側・後)という三層構造を経て、最終的に正中神経、尺骨神経、橈骨神経などの末梢神経を形成する。この「地図」を理解することで、患者の症状から障害部位を逆算して特定できる。 [解剖学] 末梢神経, 感覚, 運動
腕傍核 (わんぼうかく) Parabrachial nucleus (PBN)
脳幹(橋)に位置する神経核。痛みの信号が視床を経由せず直接投射される「エスケープルート」の終着点。慢性痛において活性化が亢進し、場所の特定を伴わない「言いようのない不快感・恐怖・不安」を生み出す。扁桃体や視床下部とも密接に連絡し、痛みの情動・自律神経反応に深く関与する。 [神経解剖学] 脳, 痛み, 自律神経, 情動・心理