用語集

全27件の神経科学用語を収録しています。

呼気
呼気(Expiration)は、肺内の二酸化炭素を多く含むガスを体外へ排出する生理現象である。これは主に横隔膜や肋間筋の弛緩による胸腔容積の減少によって受動的に行われるが、強制呼気時には腹筋群が能動的に関与する。自律神経系と深く関連し、呼吸パターンは心拍変動や疼痛閾値にも影響を与えるため、臨床ではリラクセーションや体幹安定化の指標として重要視される。 [生理学] 筋肉, 内臓, 痛み, 自律神経
IML
IML(あいえむえる)は、Intermediolateral Cell Column(中間外側細胞柱(ちゅうかんがいそくさいぼうちゅう))の略で、脊髄(せきずい)の灰白質(かいはくしつ)に存在する細胞集団です。自律神経系(じりつしんけいけい)の交感神経(こうかんしんけい)の節前(せつぜん)ニューロンがここに集まっており、心臓の拍動や血圧の調整、消化管の動きなど、意識とは無関係に体の機能を制御する指令を末梢(まっしょう)に送る重要な役割を担っています。特に胸髄(きょうずい)から上部腰髄(ようずい)にかけて存在します。 [神経系] 内臓, 脊髄, 自律神経, 血管・循環
延髄
延髄(えんずい)は、脳幹(のうかん)の最も下部に位置する重要な部分です。心臓の拍動や呼吸、血圧の調整といった、生命維持に不可欠な基本的な自律機能(じりつきのう)を司っています。また、嚥下(えんげ:飲み込むこと)や嘔吐(おうと)などの反射中枢(はんしゃちゅうすう)も含んでおり、大脳と脊髄(せきずい)をつなぐ神経伝達の通り道としての役割も担っています。 【図解】第1回講義ノート 図1:三叉神経脊髄路核のコラム構造とオニオンスキン配置 【図解】第18回講義ノート 図2:橋網様体と延髄網様体の相反する作用 【図解】第29回講義ノート 図1:三叉神経脊髄路のコラム構造とオニオンスキン配置 [神経系] 内臓, 脳, 脊髄, 末梢神経, 運動, 自律神経, 血管・循環, 嚥下・発声, 臨床検査
吸気
吸気(きゅうき)とは、横隔膜や外肋間筋の収縮により胸腔が拡大し、肺内に外気を取り込む能動的な生理現象である。これは自律神経系によって制御される生命維持に必須のプロセスであり、酸素を取り込み二酸化炭素を排出するガス交換の第一段階を担う。呼吸パターンは姿勢制御や疼痛閾値にも影響を与えるため、臨床的には重要である。 [生理学] 筋肉, 内臓, 痛み, 運動, 自律神経
中間外側細胞柱
中間外側細胞柱(ちゅうかんがいそくさいぼうちゅう)は、脊髄(せきずい)の胸髄(きょうずい)および上部腰髄(じょうぶようずい)の特定の部分にある、自律神経系(じりつしんけいけい)の重要な神経細胞の集まりです。この細胞柱は、主に交感神経(こうかんしんけい)の活動を制御する出発点となっており、心臓の拍動、血管の収縮、消化器系の動きなど、意識とは無関係に体の機能を調整する役割を担っています。ここから出た信号が、体の各器官に送られ、緊急時や活動時に体が適切に反応できるように調整しています。 [神経系] 筋肉, 内臓, 脊髄, 自律神経, 血管・循環
体幹
体幹(たいかん)は、人間の体の中心部分を指し、頭部と四肢(しし)(腕と脚)を除いた胴体のことです。具体的には、胸(むね)やお腹(おなか)、背中(せなか)を含みます。体幹の主な役割は、体を支える土台となり、姿勢(しせい)を安定させることです。また、呼吸や内臓(ないぞう)の保護といった生命維持に不可欠な機能も担っています。運動の際には、手足の動きの基盤となる重要な概念です。 [神経系] 内臓, 運動
自律神経
自律神経(じりつしんけい)は、私たちが意識しなくても、心臓の鼓動、呼吸、消化、体温調節など、生命維持に必要な体の働きを自動でコントロールしている神経システムです。アクセルの役割を果たす交感神経(こうかんしんけい)と、ブレーキの役割を果たす副交感神経(ふくこうかんしんけい)の2つから成り立っており、これらがバランスを取りながら体の内部環境を一定に保つ(ホメオスタシス)重要な役割を担っています。 【図解】第14回講義ノート 図1:感覚運動ループと自律神経の関係 【図解】第14回講義ノート 図2:T6(胸椎6番)を境界とした筋群の分布 【図解】第27回講義ノート 図1:視運動性眼振(OKN)の神経経路と二相性メカニズム 【図解】第27回講義ノート 図2:三叉神経(CN V)の眼神経枝と涙分泌反射のメカニズム 【図解】第28回講義ノート 図1:三叉神経の硬膜枝と脳脊髄液(CSF)の力学 【図解】第28回講義ノート 図2:耳下腺アミラーゼ分泌と咀嚼反射の神経経路 [神経系] 筋肉, 内臓, 脊髄, 末梢神経, 感覚, 運動, 自律神経, 眼・視覚, 聴覚・前庭, 臨床検査
脊髄
脊髄(せきずい)は、背骨(せぼね)の中を通る、太い神経の束です。脳と体の各部分を結ぶ主要な通信ケーブルのような役割を果たしており、脳からの指令を手足や内臓に伝えたり、体からの感覚情報(痛み、触覚、温度など)を脳に送り返したりしています。また、脳の関与なしに素早い反応を可能にする「反射」の中枢でもあります。脊髄の健康は、体の動きや感覚に直結する非常に重要な要素です。 【図解】第1回講義ノート 図1:三叉神経脊髄路核のコラム構造とオニオンスキン配置 【図解】第7回講義ノート 図1:下降性疼痛抑制系の構造 【図解】第8回講義ノート 図2:皮質脊髄路(錐体路)の経路 【図解】第9回講義ノート 図1:錐体外路の主要経路 【図解】第12回講義ノート 図1:運動制御の階層構造 【図解】第16回講義ノート 図1:脊髄の前処理機能と小脳への情報伝達 【図解】第18回講義ノート 図1:視蓋脊髄路と前庭脊髄路による頭部安定化 【図解】第18回講義ノート 図2:橋網様体と延髄網様体の相反する作用 【図解】第19回講義ノート 図1:脊髄における情報統合と前処理 【図解】第21回講義ノート 図1:下降性調整経路の全体像 【図解】第28回講義ノート 図1:三叉神経の硬膜枝と脳脊髄液(CSF)の力学 【図解】第29回講義ノート 図1:三叉神経脊髄路のコラム構造とオニオンスキン配置 [神経系] 内臓, 脳, 脊髄, 末梢神経, 痛み, 感覚, 運動, 聴覚・前庭, 臨床検査
IML (あいえむえる) Intermediolateral Cell Column
脊髄の中間外側核。交感神経節前ニューロンの細胞体が存在し、内臓や血管への交感神経出力を調整する。大脳皮質からの加工性抑制(ブレーキ)を受けることで、自律神経のバランスが維持される。 [脊髄] 内臓, 脳, 脊髄, 自律神経, 血管・循環
アドレナリン (あどれなりん) Adrenaline
副腎髄質から分泌されるホルモンで、交感神経系の活性化に関与する。夜間低血糖時に脳が危機を感知して放出し、交感神経を緊急発動させることで覚醒や心拍数増加を引き起こす。 [内分泌] 内臓, 自律神経, 内分泌
HPA軸 (えいちぴーえーじく) Hypothalamic-Pituitary-Adrenal axis
視床下部-下垂体-副腎系。ストレス応答や内分泌調節に関与する神経内分泌系の主要経路。女性ホルモンの急激な変動が視床下部にストレス信号を送り、隣接する自律神経中枢にも影響を与える。 [神経系] 内臓, 脳, 自律神経, 内分泌, 情動・心理
嚥下反射 (えんげはんしゃ)
食物や液体を口腔から咽頭、食道を経て胃に送り込む反射。舌、軟口蓋、咽頭、喉頭、食道の協調的な運動により成立する。嚥下時には口蓋帆張筋が収縮して耳管を開放し、中耳腔の圧力を調整する。嚥下障害(嚥下困難・誤嚥)がある患者では、耳管機能不全を併発することがある。 [生理学] 筋肉, 内臓, 運動, 聴覚・前庭, 嚥下・発声, 臨床検査
関連痛 (かんれんつう) Referred Pain
実際に損傷や炎症が生じている部位とは異なる、離れた体表面に感じられる痛み。集約説(コンバージェンス理論)により説明される。代表例として、心筋梗塞時に左肩や左腕に激痛が放散する現象がある。内臓求心路と体性感覚入力が脊髄後角の同一ニューロンに収束するため、脳が痛みの発生源を誤認することで生じる。 [神経生理学] 筋肉, 内臓, 脊髄, 痛み, 感覚
疑核 (ぎかく)
延髄に位置する運動核。孤束核からの入力を受けて、横隔膜や胃への出力を行い、実際の「嘔吐」を引き起こす。迷走神経系の過剰反応はパニック障害などの一因となる。 [神経系] 筋肉, 内臓, 脳, 末梢神経, 運動, 自律神経, 嚥下・発声
胸郭 (きょうかく) Thorax / Thoracic cage
肋骨・胸骨・胸椎によって構成されるカゴ状の骨格。肺と心臓を保護し、呼吸運動の基盤となる。胸郭の可動性低下は呼吸筋の機能不全を招き、酸素供給の低下から慢性痛の一因となる。 [解剖学] 筋肉, 内臓, 脊髄, 痛み, 運動
筋膜 (きんまく) Fascia
筋肉や臓器を包む結合組織の膜。近年の研究では、筋膜が感覚受容器を含み、固有受容覚や侵害受容に関与することが示唆されている。 [解剖学] 筋肉, 内臓, 痛み, 感覚
孤束核 (こそくかく) Nucleus Tractus Solitarius
脳幹下部に位置し、迷走神経からの胸腹部臓器、咽頭・喉頭の感覚(内側部)と味覚(外側部)の入力を受ける感覚中枢。疑核と連携して、嚥下や嘔吐などの反射を制御する。第34回講義ノート「垂直系前庭神経路の臨床解剖」で詳しく解説。 [自律神経系] 内臓, 脳, 末梢神経, 感覚, 運動, 自律神経, 聴覚・前庭, 嚥下・発声, 臨床検査
サイレント侵害受容器 (さいれんとしんがいじゅようき) Silent nociceptor
通常の状態では全く反応しない「沈黙した」侵害受容器。主に内臓・関節・皮膚に存在する。炎症や組織損傷が起きると覚醒し、一度活性化すると極めて過敏になる。普段の消化活動やわずかな膨らみさえも激痛として脳に送り続ける慢性痛の主因となる。 [感覚系] 関節, 内臓, 痛み, 感覚
子宮間膜 (しきゅうかんまく) Uterine Ligament / Broad Ligament
子宮を骨盤壁に固定する膜状の結合組織。広間膜(こうかんまく)とも呼ばれる。子宮は正中線に位置する臓器であり、脳に対して身体の中心位置を示す固有受容情報を常に発信している。骨盤の歪みや不良姿勢により子宮間膜が一方向へ牽引(ねじれ)されると、脳への位置情報にエラーが発生し、集約説を介して首の痛み、腰痛、肩こり、めまいなど全身の不定愁訴を誘発する。 [解剖学] 関節, 内臓, 痛み, 感覚, 運動, 聴覚・前庭
集約説 (しゅうやくせつ) Convergence Theory
内臓の侵害刺激を伝える求心性線維と、皮膚や筋肉の体性感覚入力が、脊髄後角の同一の二次ニューロンに収束(コンバージェンス)するという神経生理学的理論。この集約により、大脳皮質は内臓からのSOSサインを正しく識別できず、同じ髄節セグメントを共有する皮膚や筋肉の痛みとして場所を誤認する。関連痛(referred pain)の発生メカニズムを説明する中核理論。 [神経生理学] 筋肉, 内臓, 脳, 脊髄, 痛み, 感覚
節後線維 (せつごせんい) Postganglionic fiber
自律神経節(交感神経節・副交感神経節)から効果器(臓器・血管・汗腺など)に向かう神経線維。交感神経の節後線維はノルアドレナリンを放出する無髄のC線維と相同性を持つ。交感神経が過活動になると、相同性を介してC線維も共鳴発火し、慢性痛を引き起こす。 [解剖学] 筋肉, 内臓, 末梢神経, 痛み, 自律神経, 血管・循環, 内分泌
中空性臓器 (ちゅうくうせいぞうき) Hollow Viscus / Hollow Organ
内部に空洞(管腔)を持つ臓器の総称。胃、腸管、膀胱、尿管、胆管、子宮などが含まれる。中空性臓器の侵害受容器は切開には反応しないが、異常な拡張(膨張)や強い牽引、深刻な炎症に対して激しい痛みを発する特性を持つ。この特性は内臓痛の臨床的特徴を理解する上で重要である。 [解剖学] 内臓, 痛み, 感覚
腸腰筋 (ちょうようきん)
腰椎と大腿骨を結ぶ筋肉。座位での股関節屈曲位が続くと過収縮を起こし、みぞおち付近に痛みを生じるため、患者が「胃が悪い」と誤認することがある。辺縁系の機能低下(ワインドダウン)にも関連する。 [解剖学] 筋肉, 関節, 内臓, 脳, 脊髄, 痛み, 情動・心理
内臓求心路 (ないぞうきゅうしんろ) Visceral Afferent Pathway
内臓からの感覚情報(侵害刺激を含む)を中枢神経系へ伝える求心性神経経路。発生学的に、内臓専用の上行路は脳へ向けて敷設されず、既存の脊髄後角の同じ入り口(髄節セグメント)を皮膚や筋肉の体性感覚入力と共有する。この解剖学的特性が集約説の基盤であり、関連痛が生じる根本原因となっている。 [神経解剖学] 筋肉, 内臓, 脊髄, 感覚
パペッツ回路 (パペッツかいろ) Papez Circuit
海馬→乳頭体(視床下部)→視床前核→帯状回→海馬の循環経路。情動の信号を血圧上昇や消化管収縮といった身体の信号(内臓のトーン)に翻訳する情動回路。不安と胃痛の関連など、感情と内臓のフィードバック循環を担う。 [神経系] 筋肉, 内臓, 脳, 自律神経, 血管・循環, 情動・心理
副腎髄質 (ふくじんずいしつ)
副腎の内側部分。交感神経の刺激を受けてアドレナリン・ノルアドレナリンを分泌し、急性ストレス反応(脈拍・血圧・呼吸数の増加)を引き起こす。 [解剖学] 内臓, 自律神経, 血管・循環, 内分泌, 情動・心理
ワインドダウン (わいんどだうん)
神経系の機能が低下し、生命力が減退する状態。腸腰筋の緊張や胃痛が続くと、脳への血液供給も低下し、辺縁系も機能低下(ワインドダウン)を起こす。 [臨床神経学] 筋肉, 内臓, 脳, 情動・心理