用語集
全576件の神経科学用語を収録しています。
- 槌骨 (つちこつ)
- 中耳の耳小骨の一つで、鼓膜に付着して振動を砧骨に伝える。鼓膜張筋が付着し、音の伝達効率を調整する。 [神経解剖学] 筋肉, 聴覚・前庭
- TND (ティーエヌディー) Threshold of Neuronal Discharge
- 異常神経興奮。光刺激に対する瞳孔の震えや、瞬目反射時のまつ毛のピクつきなど、視床の交通整理能力が破綻している決定的なサイン。神経細胞の発火閾値が異常に低下している状態。 [神経系] 脳, 運動, 自律神経, 眼・視覚, 臨床検査
- TND (てぃーえぬでぃー)
- Trans-Neural Degenerationの略。神経が脆弱化し異常発火している状態。強刺激による介入は神経系をさらに破壊し、永続的な症状を誘発する危険がある。 [病態生理学]
- DLPT (でぃーえるぴーてぃー)
- 背外側橋中脳被蓋(Dorsolateral Pontine Tegmentum)の略称。PAGから青斑核を経由して脊髄後角へノルアドレナリンを放出するノルアドレナリン系の下行性鎮痛路。機械的侵害刺激(圧迫・刺傷など)に対するsubstance Pの放出をα₂受容体を介して選択的に遮断する。RVMルートとともに二大下行性鎮痛路を構成する。 [神経系] 脳, 脊髄, 痛み, 内分泌
- TCAサイクル (てぃーしーえーさいくる) TCA cycle (Citric acid cycle)
- クエン酸回路とも呼ばれる細胞内のエネルギー代謝経路。酸素を必要とする好気的代謝であり、ATPを産生する。低気圧時に酸素濃度が低下するとTCAサイクルの効率が落ち、ATP産生が低下する。これが天気痛(気象病)の神経生理学的な原因となる。 [生理学] 痛み
- 低閾値侵害受容器 (ていいきちしんがいじゅようき) Low-threshold nociceptor
- 比較的低い強度の刺激から反応する侵害受容器。C線維が代表的で、43〜45℃程度のぬるい熱刺激から発火し始める。過敏化(感作)が生じると閾値がさらに低下し、通常では痛みを感じない刺激でも発火するようになる(アロディニア)。 [感覚系] 末梢神経, 痛み, 感覚
- 停止部 (ていしぶ) Insertion
- 筋肉が骨や他の組織に付着する部位。外眼筋の場合、上下直筋の停止部は眼球の前・内方にあり、上下斜筋の停止部は眼球の後・外方にある。この解剖学的配置が各筋肉の作用方向を決定する。 [解剖学] 筋肉, 眼・視覚
- デルマトーム (でるまとーむ) Dermatome
- 単一の脊髄神経後根が支配する皮膚領域。感覚障害の分布から障害部位を推定する際に重要な概念。 [神経解剖学] 脊髄, 感覚
- デルマトーム (でるまとーむ)
- 特定の脊髄神経が支配する皮膚領域。皮膚分節とも呼ばれる。 [感覚系] 脊髄, 感覚
- 電位依存性カルシウムチャネル (でんいいぞんせいかるしうむちゃねる)
- 膜電位の上昇により開口するカルシウムイオンチャネル。有毛細胞では受容器電位による脱分極を感知して開き、カルシウムイオンの流入により脱分極を急激に増強する。神経伝達物質の放出にも関与する。【関連記事】第31回講義ノート:前庭神経系の臨床生理学(図2:イオンチャネルによる電位変換)では、カルシウムイオンによる増幅メカニズムを図解している。 [生理学] 感覚, 聴覚・前庭
- 伝音性難聴 (でんおんせいなんちょう)
- 外耳や中耳の物理的伝導障害により生じる難聴。鼓膜損傷、耳小骨の固着、中耳炎などが原因となる。リンネ検査ではBC > ACとなる。 [神経系] 聴覚・前庭, 臨床検査
- 電子伝達系 (でんしでんたつけい)
- ミトコンドリア内膜に存在するタンパク質複合体(Ⅰ〜Ⅴ)の連鎖。水素イオン(H⁺)の濃度勾配を利用してATPを合成する。酸素不足時に不完全還元が起き活性酸素が発生する。 [生化学] 痛み
- トーン (とーん) Tone
- 筋肉の持続的な緊張状態。神経学では、中枢からの下降性調整が正常に機能しているかを評価する指標。筋肉を最大出力で動かさせるのではなく、一定の角度で「維持」してもらい、その際の抵抗感の揺らぎや中枢からの下降性調整が効いているかを確認する。出力(運動)は入力(感覚)に依存しており、トーンが崩れているということは、筋紡錘などの感覚入力が正しく脳で統合されていないことを意味する。 [生理学] 筋肉, 感覚, 運動
- 動眼神経 (どうがんしんけい)
- 第III脳神経。眼球運動の大部分を担う外眼筋と、瞳孔収縮・水晶体調節に関わる内眼筋を支配する。 【図解】第25回講義ノート 図1: [脳神経] 筋肉, 末梢神経, 運動, 自律神経, 眼・視覚
- 動眼神経 (どうがんしんけい) Oculomotor Nerve (CN III)
- 第三脳神経。中脳から出て、上直筋・下直筋・内直筋・下斜筋、および上眼瞼挙筋を支配する。副交感神経線維も含み、瞳孔括約筋と毛様体筋を制御する。動眼神経麻痺では眼球が外下方を向き(外転・下転)、眼瞼下垂と散瞳を伴う。 【図解】第25回講義ノート 図1: [脳神経] 筋肉, 脳, 末梢神経, 運動, 自律神経, 眼・視覚
- 橈骨神経 (とうこつしんけい) Radial Nerve
- 後神経束から分岐する末梢神経で、上肢の伸筋群を支配する。C5からC8の神経根要素を含み、上腕三頭筋、前腕の伸筋群、手背の感覚を支配する。「下垂手(drop hand)」と呼ばれる特徴的な症状を呈する橈骨神経麻痺は、臨床現場でよく遭遇する障害である。 [解剖学] 筋肉, 末梢神経, 感覚
- 糖質炎症 (とうしつえんしょう)
- 果糖(フルクトース)などの過剰摂取によって引き起こされる慢性的な低レベルの炎症。炎症性メディエーターの放出により侵害受容器の閾値を下げ、慢性痛の素地を作る。 [病態生理学] 痛み, 感覚
- 疼痛受容性扁桃体 (とうつうじゅようせいへんとうたい) Nociceptive amygdala / Pain-receptive amygdala
- 扁桃体の中心外側核(CEl)に存在するニューロンのうち、約80%が痛みの情報処理に特化しているとされる神経群の概念的呼称。特に下肢(膝・股関節・足首)からの侵害刺激に対して高い感受性を持つ。不動(廃用)によって下肢からの適正な感覚入力が途絶えると、このネットワークが過敏化(感作)し、わずかな組織変化を「重大な危機」として増幅する。 [神経生理学] 関節, 脳, 痛み, 感覚, 情動・心理
- 島皮質 (とうひしつ) Insular cortex (Insula)
- 大脳皮質の外側溝(シルビウス裂)の奥に位置する皮質領域。痛みの感覚と感情を統合する「痛みの情動的評価」の中枢。内受容感覚(身体内部の状態認識)・共感・嫌悪感にも関与する。幼少期の経験によって発達が左右され、過保護な環境では正常に育たず、成人後の痛み過敏につながる可能性がある。 [神経解剖学] 脳, 痛み, 感覚, 情動・心理
- 逃避反射 (とうひはんしゃ)
- 「逃避反射」の詳細な定義は準備中です。 運動, 臨床検査
- 動毛 (どうもう)
- 有毛細胞の先端に存在する1本の長い感覚毛。不動毛とともにチップリンクで繋がれており、動毛側への傾斜時にイオンチャネルが開いて興奮が生じる。前庭系の方向選択性を決定する重要な構造要素である。【関連記事】第31回講義ノート:前庭神経系の臨床生理学(図1:チップリンクの構造と働き)。 【図解】第32回講義ノート 図1:前庭有毛細胞のチップリンク構造と働き [解剖学] 感覚, 聴覚・前庭
- 徒手療法 (としゅりょうほう)
- 「徒手療法」の詳細な定義は準備中です。
- トランスニューラル・ディジェネレーション (とらんすにゅーらる・でぃじぇねれーしょん)
- 神経が脆弱化し異常発火している状態(TND)。ATP不足や虚血により聴覚路などの多段階経路で生じやすく、強い外因性刺激は禁忌。内因性刺激による再起動が必要。 [病態生理学] 痛み, 血管・循環, 聴覚・前庭
- 内嗅皮質 (ないきゅうひしつ) Entorhinal Cortex
- 側頭葉内側に位置し、エピソード記憶の出入り口となる。海馬と大脳皮質を結び、記憶の形成と想起に重要な役割を果たす。 [神経系] 脳
- 内臓求心路 (ないぞうきゅうしんろ) Visceral Afferent Pathway
- 内臓からの感覚情報(侵害刺激を含む)を中枢神経系へ伝える求心性神経経路。発生学的に、内臓専用の上行路は脳へ向けて敷設されず、既存の脊髄後角の同じ入り口(髄節セグメント)を皮膚や筋肉の体性感覚入力と共有する。この解剖学的特性が集約説の基盤であり、関連痛が生じる根本原因となっている。 [神経解剖学] 筋肉, 内臓, 脊髄, 感覚
- 内側系(視床) (ないそくけい) Medial thalamic system
- 痛みの視床経路の一つ。脊髄から視床の髄板内核群を経由して扁桃体・帯状回・前頭前野などの辺縁系に至る経路。「嫌だ、怖い、逃げたい」という痛みの不快感・情動・記憶形成を担う「情動系」。急性痛でも扁桃体に恐怖が刻まれ、適切に処理されないと慢性痛の温床となる。外側系(識別系)と対をなす。 [解剖学] 脳, 脊髄, 痛み, 情動・心理
- 内側系 (ないそくけい)
- 痛みの伝達経路の一つ。脊髄から視床内側核を経て扁桃体・辺縁系に至り、痛みに伴う不快感・恐怖・感情的記憶を形成する。 [生理学] 脳, 脊髄, 痛み, 情動・心理
- 内側前頭皮質 (ないそくぜんとうひしつ)
- BA24,25,32。相手の気持ちを察する・共感する・場の状況を読む高度な社会性を司る。機能低下で「空気が読めない(KY)」現象が生じる。 [神経解剖学]
- 内側前脳束 (ないそくぜんのうそく)
- VTAから辺縁系各部(側坐核・扁桃体・前頭前野等)へドパミンを運ぶ脳内の基幹道路。中脳辺縁ドパミン系の主要な投射経路。 [神経解剖学] 脳, 運動, 情動・心理
- 内側翼突筋神経 (ないそくよくとつきんしんけい)
- 三叉神経下顎神経(V3)から分岐し、口蓋帆張筋と鼓膜張筋を支配する神経。耳管の開放機能に重要な役割を果たす。 【図解】第29回講義ノート 図2:耳管開放と口蓋帆張筋の神経経路 [神経解剖学] 筋肉, 末梢神経, 聴覚・前庭, 嚥下・発声
- 内転 (ないてん) Adduction
- 眼球が鼻側(内側)に向かう運動。内直筋が主に担当するが、上下直筋の停止部が眼球の前・内方にあるため、これらの筋肉も内転の力を加える。眼球運動は複数の筋肉による共同運動である。 【図解】第26回講義ノート 図2:眼球の回転軸とATP枯渇のメカニズム [解剖学] 筋肉, 痛み, 運動, 眼・視覚, 臨床検査
- 内部モデル (ないぶもでる)
- 小脳が保持する「理想の運動パターン」。大脳から送られる詳細な運動情報と実際の運動のエラーを照合し、即座に修正する。 脳, 運動
- 内包 (ないほう)
- 大脳基底核と視床の間を通る神経線維の束。運動・感覚の上行路と下行路が密集して通過する。 [神経解剖学] 脳, 感覚, 運動
- 内リンパ水腫 (ないりんぱすいしゅ)
- 内耳のリンパ液が過剰に貯留し内圧が上昇した状態。蝸牛と半規管の両方に影響を及ぼし、めまいと聴覚障害を同時に引き起こす。 [病態生理学] 聴覚・前庭
- 乳頭体 (にゅうとうたい) Mammillary Body
- 視床下部の下面に位置し、海馬からの情報を視床前核へ中継する。パペッツの情動回路の一部を構成する。 [神経系] 脳, 情動・心理
- 脳脊髄液 (のうせきずいえき)
- 脳と脊髄を取り囲む無色透明の液体。栄養供給、老廃物除去、物理的保護の役割を持つ。略称CSF。 【図解】第28回講義ノート 図1:三叉神経の硬膜枝と脳脊髄液(CSF)の力学 [神経解剖学] 脊髄, 末梢神経
- 脳脊髄液減少症 (のうせきずいえきげんしょうしょう)
- 脳脊髄液が減少する病態。硬膜の緊張が増加し、頭痛や頸部痛などの症状を引き起こす。 【図解】第28回講義ノート 図1:三叉神経の硬膜枝と脳脊髄液(CSF)の力学 [病態生理学] 脊髄, 末梢神経
- ノセボ (のせぼ)
- 負の暗示・医療者への不信感・恐怖によって不快情動が惹起され、痛みの増悪やめまい・嘔吐が引き起こされる現象。プラシーボの反対概念。扁桃体→腕傍核(PBN)経路を介して痛みを増悪させる。 [神経学] 脳, 痛み, 聴覚・前庭, 情動・心理
- パースート (パースート) Pursuit
- 追従運動。ゆっくり動く物体を滑らかに追跡する眼球運動。サッケード(跳躍運動)と対比される。臨床では、パースートの検査を通じて動きの左右差だけでなく、繰り返しの負荷による「スタミナ(機能維持能力)」を評価する。 【図解】第27回講義ノート 図1:視運動性眼振(OKN)の神経経路と二相性メカニズム [神経系] 運動, 眼・視覚, 聴覚・前庭, 臨床検査
- 背面直視 (はいめんちょくし)
- 自分の痛みや症状の状態から逃げずに、時系列のメモ等で客観的に観察・分析すること。初診時に患者に時系列のメモ書きを持参させ、痛みを徹底的に背面直視させることで不安とストレスを軽減し、プラシーボ効果を最大化する臨床戦略の一つ。 [臨床神経学] 痛み, 情動・心理
- 拍動性頭痛 (はくどうせいずつう)
- 緊張性頭痛の酸欠が限界に達し、動脈の酸素センサーが危機を感知して血管を大拡張させることで、血管壁の侵害受容器が引き伸ばされて生じるズキズキした頭痛。緊張性頭痛→ATP不足→筋肉ロック→酸欠限界→動脈大拡張という「頭痛ドミノ」の最終段階。 [症状] 筋肉, 痛み, 感覚, 血管・循環
- パチニ小体 (ぱちにしょうたい)
- 深部組織に存在する振動感覚受容器。128Hzの振動を感知し、触覚・振動覚の伝達に関与する。音叉検査では聴覚と振動感覚の両方を刺激する。 【図解】第6回講義ノート 図2:皮膚の受容器の種類と分布 【図解】第13回講義ノート 図2:表在感覚の4つの主要受容器 [神経系] 感覚, 聴覚・前庭, 臨床検査
- パチニ小体 (ぱちにしょうたい)
- 皮膚深層や関節に存在する機械受容器。振動や圧力の変化を検出し、急速に順応する特性を持つ。 【図解】第6回講義ノート 図2:皮膚の受容器の種類と分布 【図解】第13回講義ノート 図2:表在感覚の4つの主要受容器 [感覚系] 関節, 感覚
- パペッツ回路 (ぱぺっつかいろ) Papez Circuit
- 海馬、乳頭体、視床前核、帯状回を結ぶ情動回路。気分と活力を支配し、ループ内の一箇所の入力が滞ると全体の出力が渦巻き状に低下する(ワインドダウン)。 [神経系] 脳, 情動・心理
- パペッツ回路 (パペッツかいろ) Papez Circuit
- 海馬→乳頭体(視床下部)→視床前核→帯状回→海馬の循環経路。情動の信号を血圧上昇や消化管収縮といった身体の信号(内臓のトーン)に翻訳する情動回路。不安と胃痛の関連など、感情と内臓のフィードバック循環を担う。 [神経系] 筋肉, 内臓, 脳, 自律神経, 血管・循環, 情動・心理
- パペッツの情動回路 (ぱぺっつのじょうどうかいろ) Papez circuit
- 1937年にジェームズ・パペッツが提唱した感情・記憶に関わる神経回路。海馬→乳頭体→視床前核→帯状回→海馬傍回→海馬の閉じたループを形成する。痛みの感情的評価・記憶・自律神経反応に深く関与し、慢性痛における「痛みの記憶」や「恐怖回避行動」の形成に重要な役割を果たす。 [神経生理学] 脳, 痛み, 自律神経, 情動・心理
- 半規管 (はんきかん)
- 内耳に位置する三つの半円形の管で、頭部の回転運動を検出する平衡感覚器官。蝸牛とリンパ液を共有しており、内リンパ水腫の影響を受ける。 [神経解剖学] 感覚, 運動, 聴覚・前庭
- 瘢痕組織 (はんこんそしき)
- 手術や外傷後に形成される線維性の組織。正常な神経支配が変化し、微弱な侵害刺激を中枢に持続的に送り続けることで、遠隔部位の慢性痛や自律神経失調の原因となる場合がある。 [病態生理学] 痛み, 運動, 自律神経
- PAG (ぴーえーじー) Periaqueductal Gray
- 中脳水道周辺灰白質。扁桃体や皮質からの投射を受けて、脊髄後角での痛みを遮断する下降性疼痛抑制系の中枢。 [神経系] 脳, 脊髄, 痛み, 情動・心理, 臨床検査
- PF核 (ピーエフかく) Parafascicular Nucleus
- 視床の側傍核。上行性網様体賦活系(ARAS)の一部として、脳幹からの覚醒信号を大脳皮質へ投射する。CM核とともに意識の覚醒レベルを調整。 [神経系] 脳