用語集
全23件の神経科学用語を収録しています。
- 内因性オピオイド
- 辺縁系や側坐核がポジティブに活性化されると体内で産生される鎮痛物質。手技療法(外因性刺激)と異なり、脳内から分泌される鎮痛物質には副作用がない。 [神経生理学] 脳, 痛み, 情動・心理, 治療・リハビリ
- α-γ連関 (アルファ・ガンマれんかん)
- アルファ運動ニューロンとガンマ運動ニューロンが協調して働く仕組み。筋肉が収縮する際、ガンマ運動ニューロンが筋紡錘の両端を収縮させることで、センサー部の感度(ゲイン)を維持し、筋肉の長さ変化を正確に検出できる状態を作る。 【図解】第20回講義ノート 図1:α-γ連関のメカニズム [神経生理学] 筋肉, 運動
- MIAS (エムアイエーエス) Mechanically Insensitive Afferent Nociceptor
- 機械刺激低感受性求心性線維(Mechanically Insensitive Afferent)の略称。関節包や骨膜に分布する侵害受容器の一種で、正常な関節運動の範囲内では非常に高い閾値を持ち一切発火しない。しかし、関節のねじれ逸脱や持続的な虚血により閾値が劇的に低下(感作)し、わずかな刺激でも激痛信号を発するようになる。サイレント受容器とも呼ばれる。 [神経生理学] 関節, 痛み, 感覚, 運動, 血管・循環
- 活動電位 (かつどうでんい)
- 神経細胞が興奮した際に生じる急速な膜電位の変化。全か無かの法則に従い、神経信号として伝導される。 [神経生理学]
- 過敏化 (かびんか)
- 神経系が刺激に対して過剰に反応する状態。末梢性と中枢性があり、慢性痛の原因となることがある。 【図解】第5回講義ノート 図1:ATP不足が痛みを生むメカニズム 【図解】第5回講義ノート 図2:朝の痛みとデスクワーク不調の共通原因 [神経生理学] 痛み
- 関連痛 (かんれんつう) Referred Pain
- 実際に損傷や炎症が生じている部位とは異なる、離れた体表面に感じられる痛み。集約説(コンバージェンス理論)により説明される。代表例として、心筋梗塞時に左肩や左腕に激痛が放散する現象がある。内臓求心路と体性感覚入力が脊髄後角の同一ニューロンに収束するため、脳が痛みの発生源を誤認することで生じる。 [神経生理学] 筋肉, 内臓, 脊髄, 痛み, 感覚
- ゲートコントロール理論 (げーとこんとろーるりろん) Gate Control Theory
- Melzack と Wall が1965年に提唱した痛みの制御理論。脊髄後角において、太い有髄線維の活動が痛覚伝達を抑制するという概念。 [神経生理学] 脊髄, 末梢神経, 痛み
- ゲイン (ゲイン)
- 筋紡錘の非収縮部(中央のセンサー部)がどれだけ「たるんでいるか」の幅。ガンマ運動ニューロンによる調整が低下すると、ゲインが大きく(たるみが大きく)なり、感受性は低下する。逆に、ゲインが小さく(ピンと張る)なると、感受性は極めて高くなる。 【図解】第20回講義ノート 図1:α-γ連関のメカニズム 【図解】第20回講義ノート 図2:ゲインとセンシビリティの関係 [神経生理学] 筋肉, 運動
- 向性 (こうせい) Tropism / Trophic
- 特定の方向・対象へ向かう性質。神経科学では「神経栄養因子への向性(neurotropism)」として用いられ、神経線維が特定の標的(筋肉・感覚受容器など)へ成長・投射する性質を指す。 [神経生理学] 筋肉, 感覚
- 次元性抑制 (じげんせいよくせい)
- 人間が目標物に対して手を伸ばし、一点のブレもなく静止させられる高度な神経学的プログラム。筋紡錘(長さのセンサー)と腱紡錘(張力のブレーキ)を1ミリ秒単位で相反的に働かせることで実現される。 [神経生理学] 筋肉
- 集約説 (しゅうやくせつ) Convergence Theory
- 内臓の侵害刺激を伝える求心性線維と、皮膚や筋肉の体性感覚入力が、脊髄後角の同一の二次ニューロンに収束(コンバージェンス)するという神経生理学的理論。この集約により、大脳皮質は内臓からのSOSサインを正しく識別できず、同じ髄節セグメントを共有する皮膚や筋肉の痛みとして場所を誤認する。関連痛(referred pain)の発生メカニズムを説明する中核理論。 [神経生理学] 筋肉, 内臓, 脳, 脊髄, 痛み, 感覚
- 受容器電位 (じゅようきでんい)
- 受容器が刺激を受けた際に生じる局所的な電位変化。閾値を超えると活動電位が発生する。 【図解】第32回講義ノート 図2:イオンチャネルによる電位変換メカニズム [神経生理学] 感覚
- 侵害受容器 (しんがいじゅようき) Nociceptor
- 組織損傷や潜在的な損傷を検出する感覚受容器。痛覚の起点となる。Aδ線維とC線維に存在し、機械的、熱的、化学的刺激に反応する。 [神経生理学] 末梢神経, 痛み, 感覚
- 侵害情報 (しんがいじょうほう) Nociceptive information
- 組織損傷を引き起こす可能性のある刺激(機械的・熱的・化学的)に関する感覚情報。侵害受容器(ノシセプター)で受容され、Aδ線維(速い鋭い痛み)とC線維(遅い鈍い痛み)によって脊髄後角へ伝達される。扁桃体には嗅覚・味覚・視覚とともに侵害情報がダイレクトに入力され、生存に関わる危険評価に用いられる。 [神経生理学] 脳, 脊髄, 末梢神経, 痛み, 感覚, 眼・視覚, 情動・心理
- 随伴不活 (ずいはんふかつ)
- 一つの神経が興奮すると隣接エリアも連動して活性化する現象。眼球運動→中脳→VTA→側坐核の連鎖発火(眼球運動リハビリの鎮痛メカニズム)に関与する。 [神経生理学] 脳, 痛み, 運動, 眼・視覚, 治療・リハビリ
- センシビリティ (センシビリティ)
- 筋紡錘がわずかな伸びに対して、どれだけ早く発火できるかの感度。ゲイン(たるみ)と逆相関の関係にあり、網様体からの調整によって最適化される。 【図解】第20回講義ノート 図2:ゲインとセンシビリティの関係 [神経生理学] 筋肉, 脳
- 促通系 (そくつうけい)
- 神経活動を促進する神経回路。運動の開始や感覚の増強に関与する。 [神経生理学] 感覚, 運動
- 咀嚼反射 (そしゃくはんしゃ)
- 咀嚼筋の収縮→耳下腺からのアミラーゼ分泌→消化促進→エネルギー供給→咀嚼筋の機能維持という循環的な反射機構。 【図解】第28回講義ノート 図2:耳下腺アミラーゼ分泌と咀嚼反射の神経経路 [神経生理学] 筋肉, 運動, 血管・循環, 臨床検査
- 中枢性感作 (ちゅうすうせいかんさ) Central Sensitization
- 中枢神経系における痛覚処理の増強状態。通常は痛みを引き起こさない刺激で痛みが生じたり、痛み刺激に対する反応が増大する。 [神経生理学] 痛み
- 疼痛受容性扁桃体 (とうつうじゅようせいへんとうたい) Nociceptive amygdala / Pain-receptive amygdala
- 扁桃体の中心外側核(CEl)に存在するニューロンのうち、約80%が痛みの情報処理に特化しているとされる神経群の概念的呼称。特に下肢(膝・股関節・足首)からの侵害刺激に対して高い感受性を持つ。不動(廃用)によって下肢からの適正な感覚入力が途絶えると、このネットワークが過敏化(感作)し、わずかな組織変化を「重大な危機」として増幅する。 [神経生理学] 関節, 脳, 痛み, 感覚, 情動・心理
- パペッツの情動回路 (ぱぺっつのじょうどうかいろ) Papez circuit
- 1937年にジェームズ・パペッツが提唱した感情・記憶に関わる神経回路。海馬→乳頭体→視床前核→帯状回→海馬傍回→海馬の閉じたループを形成する。痛みの感情的評価・記憶・自律神経反応に深く関与し、慢性痛における「痛みの記憶」や「恐怖回避行動」の形成に重要な役割を果たす。 [神経生理学] 脳, 痛み, 自律神経, 情動・心理
- 負の情動 (ふのじょうどう) Negative emotion / Negative affect
- 恐怖・不安・不快・怒り・嫌悪などの不快な感情状態の総称。扁桃体が主要な制御中枢として機能する。慢性痛では結合腕傍核(PBN)から扁桃体への直接投射により、場所の特定を伴わない強烈な負の情動が生じる。痛みの「感情的側面」を担い、慢性痛の苦痛・回避行動・破局化思考の基盤となる。 [神経生理学] 脳, 痛み, 情動・心理, 臨床検査
- 抑制系 (よくせいけい)
- 神経活動を抑制する神経回路。過剰な興奮を防ぎ、運動や感覚の調節に重要な役割を果たす。 【図解】第7回講義ノート 図1:下降性疼痛抑制系の構造 【図解】第15回講義ノート 図1:しびれの二つのタイプ:知覚鈍麻と知覚異常 [神経生理学] 痛み, 感覚, 運動